障害福祉優先か介護保険優先か。障害から介護保険への移行が必要な主なサービス
社会保障制度の原則である保険優先の考え方の下、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスが利用できる場合には、介護保険サービスを優先して利用する必要があります1 2 。しかし、多くのサービスがある中で、障害優先のサービスと介護保険優先のサービスの区別については非常にわかりにくいところです。
障害福祉サービスと介護保険サービスの優先適用の具体的な考え方については、厚生労働省の次の通知に記載されています。(ダウンロード@Dropbox)
- 平成19年3月28日「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」
- 平成27年2月18日「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度の適用関係等に係る留意事項等について」
- 令和5年6月30日「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度の適用関係等に係る留意事項及び運用の具体例等について」
これらの通知および報酬告示の規定を整理すると、各サービスにおける障害福祉と介護保険の優先関係はおおよそ次のとおりになります。
【凡例】◯:障害福祉優先 ✕:介護保険優先
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障害福祉サービス | 第2号被保険者3 (40歳~64歳) | 第1号被保険者 (65歳以上) |
---|---|---|
居宅介護 | ✕ | ✕ |
重度訪問介護 | ✕ | ✕ |
同行援護 | ◯ | ◯ |
行動援護 | ◯ | ◯ |
重度障害者等包括支援 | ✕ | ✕ |
生活介護 | ✕ | ✕ |
短期入所 | ✕ | ✕ |
自立訓練(機能訓練) | ✕ | ✕ |
自立訓練(生活訓練) | ◯ | ◯ |
就労移行支援 | ◯ 65歳到達後も原則継続可4 | ✕ 新規利用不可4 |
就労継続支援A型 | ◯ 65歳到達後も原則継続可5 | ✕ 新規利用不可5 |
就労継続支援B型 | ◯ | ◯ |
就労定着支援 | ◯ | ◯ |
自立生活援助 | ◯ | ◯ |
療養介護 | ✕ 既存利用者は65歳到達後も継続可 (介護保険適用除外) | ✕ |
施設入所支援 | ✕ 既存利用者は65歳到達後も継続可 (原則6介護保険適用除外) | ✕ |
共同生活援助 | ✕ | ✕ 身体障害者は原則新規利用不可7 |
宿泊型自立訓練 | ◯ | ◯ |
地域移行支援 | ◯ | ◯ |
地域定着支援 | ◯ | ◯ |
なお、この表はあくまでも目安で一律に適用されるものではありません。実際の運用は各通知のとおり、利用者の障害特性を考慮し、必要な支援が受けられるかどうかという観点から個別に審査されることになります。
特に介護保険が適用になる前から障害福祉サービスを利用していた方については、障害の状況から障害福祉サービスの利用が適当な事例は多々あると思われます。居宅介護利用者については比較的介護保険に移行することが多いと思われます8が、介護保険サービスでは支給量が不足する場合や介護認定を受けた結果非該当だった場合などは障害福祉サービスを利用(併用)することになります。
介護保険サービスへの移行後は原則1割の自己負担金が生じますが、一定の要件を満たす場合は(新)高額障害福祉サービス等給付費が支給され負担金は還付されます。当該給付費の対象となるサービスは居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所であり、厚生労働省は特にこの4サービスについて介護保険優先原則を意識しているものと考えられます9。
- 障害者総合支援法第7条「他の法令による給付等との調整」[↩]
- 平成27年4月28日社会保障審議会障害者部会(第61回)資料2[↩]
- なお、いわゆるみなし2号(生活保護受給者)については、生活保護法第4条第2項の他法優先原則に基づきすべて障害福祉サービスが優先されます。[↩]
- 報酬告示:基本報酬注1「65歳に達する前5年間引き続き障害福祉サービスに係る支給決定を受けていたものであって、65歳に達する前日において就労移行支援に係る支給決定を受けていたものに限る」(要約)[↩][↩]
- 報酬告示:基本報酬注1「65歳に達する前5年間引き続き障害福祉サービスに係る支給決定を受けていたものであって、65歳に達する前日において就労継続支援A型に係る支給決定を受けていたものに限る」(要約)[↩][↩]
- 事例は少ないと思いますが、生活介護の支給決定を受けていない(就労継続支援B型などを利用している)場合は介護保険が適用になります。[↩]
- 報酬告示:基本報酬注1「身体障害者にあっては65歳に達する日の前日までに障害福祉サービスを利用したことがある者に限る」(要約)[↩]
- 居宅介護事業所(障害)が訪問介護事業所(介護)を兼ねている場合が多いためなど。[↩]
- 各年度に厚生労働省から発出される通知「障害福祉サービス・障害児通所支援等の利用者負担認定の手引き」の「高額障害福祉サービス等給付費」に関する項に「なお、これはあくまで新高額障害福祉サービス等給付費の対象となるサービスを規定したものであり、必ずしも障害者総合支援法第7条及び障害者総合支援法施行令第2条の介護保険優先原則に係る「相当サービス」となるわけではない」とあることに留意すること。[↩]