障害福祉サービスと障害児通所支援の支給量はどのように決定されるのか。国が定める支給量の目安

障害福祉サービスや障害児通所支援の支給量の決定については、自治体により運用が非常に異なることから計画作成の際に悩まれている相談支援専門員は多いのではないでしょうか。

支給量の決定に関しては、障害者自立支援法の施行の際に厚生労働省が自治体に通知しています1。要旨は次のとおりです。

  • 市町村であらかじめ支給決定基準を定めておくことが望ましい。
  • 一人ひとりの事情を勘案し適切に支給決定を行うこと。特に日常生活に支障が生じるおそれがある場合には、あらかじめ定めた基準にこだわらず柔軟に支給量を設定すること。
  • 国庫負担基準(後述)は個々の利用者に対する支給量の上限ではない。

支給量は各自治体が定める支給決定基準をベースに個々に決定することが基本ではありますが、厚生労働省も目安となる支給量を提示しています。しかし、その規定は各通知等に散逸しており、全体像を把握することは困難です。そこで、各サービスにおける支給量の国目安をまとめました。

ちなみに最終的な結論としては、自治体が必要と認めれば年間365日24時間分の支給決定をすることはすべてのサービスにおいて可能で、制度上完全に決定不可能な支給量の上限は存在しません2

訪問系サービス共通(国庫負担基準)

国庫負担基準は、前述の厚生労働省通知のとおり本来は利用者個人の支給量に関する基準ではありませんが、重要な基準であることから解説します。

障害福祉サービスの財源は原則として国2分の1、都道府県4分の1、市町村4分の1です。しかし、訪問系サービスにおいて市町村が一定の基準を超えて介護給付費を支給すると、超過分は国と都道府県から負担金が配分されないため市町村の自己負担となります。この負担金に関する基準が国庫負担基準です。

国庫負担基準は市町村全体の支給決定者数と実際の支給量に基づき算定するため、個人に対しては柔軟な配分が可能です。しかし、現実としては市町村が支給決定において参考にしたり、基準超えしている市町村において支給量の抑制に働いたりすることはあるでしょう。

国庫負担基準についての詳細は次のページをご確認ください。:令和5年9月19日「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料6

居宅介護

  • 1回当たり身体介護3時間、家事援助1.5時間までの支給決定が基本3
  • 1日に複数回算定する場合は概ね2時間以上の間隔を空けること。2時間未満の場合は原則通算する4
  • 最低算定時間は20分程度以上。ただし、夜間、深夜および早朝の時間帯に提供する場合はこの限りではない4
  • 共同生活援助の利用者が慢性の疾病等で定期的に通院を必要とする場合に限り、通院等介助や通院等乗降介助を月2回まで利用可能5

重度訪問介護

  • 1日3時間以上の支給決定が基本6
  • 比較的長時間の総合的・断続的支援が前提。3時間以上の利用であっても支援内容により重度訪問介護ではなく居宅介護の支給決定が適切な場合がある6
  • 1日に複数回算定する場合は原則通算する4
  • 利用者のキャンセル等により1日3時間未満のサービス提供になった場合でも、概ね40分以上支援していれば報酬算定可能4

同行援護

  • 1日に複数回算定する場合は概ね2時間以上の間隔を空けること。2時間未満の場合は原則通算する4
  • 最低算定時間は20分程度以上。ただし、夜間、深夜および早朝の時間帯に提供する場合はこの限りではない4

行動援護

  • 利用時間は半日の範囲内を想定4
  • 算定は1日1回のみ4
  • 最低算定時間は20分程度以上。なお、夜間、深夜および早朝の時間帯の利用は想定していないため加算はない4

日中活動系サービス

  • 原則の日数:各月の日数-8日7
  • 事業運営上の理由から「原則の日数」を超える支援が必要となる場合は、3か月以上1年以内の期間において、利用日数の合計が「原則の日数」の総和の範囲内であれば指定権者に届け出た上で利用可能7
  • 利用者の状態等により市町村が必要と判断した場合には「原則の日数」を超えて支給決定可能7

短期入所

  • 年間利用日数は180日を超えない8
  • 連続利用日数は30日を限度とする9
  • 年間・連続利用日数ともに、やむを得ない事情がある場合は自治体の判断に応じて、例外的にこれらの日数を超えて支給決定可能10

入所・居住系サービス

  • 当該月の日数9
  • 共同生活援助の体験利用の場合は連続30日、年合計50日を限度とする11

就労定着支援

  • 当該月の日数9
  • 月1回以上利用者に支援レポートを提出すること4

自立生活援助

  • 当該月の日数9
  • 月2回以上利用者を定期的に訪問すること4

児童発達支援・放課後等デイサービス

  • 原則の日数:各月の日数-8日を上限とする12(勘案事項を踏まえ適切な必要日数を定める。)。
  • 障害児の状態等により市町村が必要と判断した場合には「原則の日数」を超えて支給決定可能12

居宅訪問型児童発達支援

  • 週2日を目安とする。ただし、障害児通所支援の集団生活に移行していくための支援として集中的に支援を提供する場合はこの限りではない13

保育所等訪問支援

  • 2週間に1回程度、概ね月2回の利用を想定。ニーズに応じてそれ以上の支援を行うことも可能14
  1. 平成19年4月13日「障害者自立支援法に基づく支給決定事務に係る留意事項について[]
  2. 正確には共同生活援助の体験利用を除く。また、行動援護の単価設定は1日7時間30分まで。[]
  3. 平成18年8月24日「障害者自立支援法関係Q&A」(障害保健福祉関係主管課長会議)[]
  4. 留意事項通知[][][][][][][][][][][]
  5. 「月2回まで」の明文規定は確認できていません。ただ、2019年8月5日のきょうされん居住支援部会において厚生労働省が月2回までと発言しています。対象者については各年度発「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」に規定あり。[]
  6. 平成19年2月16日「重度訪問介護等の適正な支給決定について[][]
  7. 平成18年9月28日「日中活動サービス等を利用する場合の利用日数の取扱いに係る事務処理等について[][][]
  8. 特定相談支援事業所指定基準[]
  9. 各年度発「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」[][][][]
  10. 平成30年2月5日「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」[]
  11. 報酬告示[]
  12. 平成28年3月7日「障害児通所支援の質の向上及び障害児通所給付費等の通所給付決定に係る留意事項について[][]
  13. 平成30年3月6日「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律の施行における新サービスの取扱いについて[]
  14. 令和3年3月31日「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」問70[]
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